20代の頃、病院で会計待ちをしていた時に会計窓口から、「たつよしじょういちろうさ~ん。」とアナウンスが聞こえてきたので、まあ同姓同名もそんなにいないだろうと即座にそちらのほうを見ると、そこにプロボクサーでWBCバンタム級チャンピオンの辰吉丈一郎さんがそちらへ向かっているのが見えた。
私は大慌てで(これは、すぐさま売店でサインペンを買いに行くべし!)と、同じフロアにある売店へとダッシュした。
無事サインペンをゲットして元いた場所に戻ると、まだ近くにいた辰吉さんに歩みより、声をかけた。
「すみませーん、ここにサインしてもらっていいですか?」
辰吉さんは、一瞬面食らった様子で、「ちょっ、自分チャレンジャーやなぁ。」…
と。これは断られるんだと思いきや、ちゃんと応じてくださった。
サイン用の色紙などやはり売店には置いているはずもなく、ここに…と差し出し
たのはGパンをはいた足(太もものところ)だ。
あまりに必死だったため、恥ずかしいということを忘れていたようだ。
それと同時にこのドタバタ劇を楽しむ自分もいたのかも知れない。以外と自分が
ミーハーな人間なのだとも気付かされた。そして、今もこういうところは変わら
ずに大人になった。
このこともあって、チャレンジャーという言葉は結構気に入っている。
そのあと辰吉さんは、正面玄関に横着けした車でかっこよく去って行ったのだっ
た。
ただ、この時のGパンが現在行方不明になっていることは残念なことだ。
【一瀉千里】いっしゃせんり … 流れの非常に速いこと。転じて、文章や弁舌
がよどみなく、すらすらできることのたとえ。また、ものごとが速やかに進みか
たづくこと。「瀉」は傾斜地を水が勢いよく流れ出すこと。水が傾斜地を流れ出す
と一気に千里もの距離を流れ下る意。
漢検四字熟語辞典【第一版】より