とある商業施設駐車場でのこと、さあ帰ろうと車に乗り込み、走らせた。駐車場ゲートに出るには、場内一方通行になっているのにもかかわらず、突如私の車の前に一台の車が脇から入ってきた。
面食らいながらもその前方を塞ぐように割り込んできた車を観察してみると、どうやら縁石に乗り上げていて、ハンドル操作に手間取っている模様。(そりゃ、ここはもともと通ってはいけない所なんだから…。)そう思いながら見ていた。
そこから数メートル、今度は出庫専用のゲートにさしかかった。このゲートは各方面へ出られるよう左右に2つ並んでいるのだが、前の車は大きく車体を振り、右側のゲートに入りそうになったのを、急激に左側のゲートに変更したのだ!!!
今のは何!? 自由過ぎる!!
私はそんな怖い運転を目の当たりにし、おそるおそる右側のゲートに入った。ここは、有人なのだ。ゲートに立っていた年配の男性が苦笑いしながら一言、「怖いよね~。」…先ほどの一部始終を見てたらしい。
ゲートを出てすぐ、その車は結局私の後ろを走っているではないか。年配の女性だ。もちろんこちら側の道に合流できるようになってはいたけど。
このままついてこられても…。と、不安に思っていたらどこかで曲がったらしい。それはそれで、大丈夫なのか!?
舅のかつて入院していた病院の駐車場入り口ゲートでも同様の事があった。その駐車場は満車であり、じっと空くのを待っていた。
一台前の車が順番になりゲートも開き、さあ中に入っていく…と、思いきやその車は前進するどころか、なんとバックしてきたのだ!!
幸いゲート付近にいた誘導の男性が慌ててその前の車に突進、ボディーを叩いて全力で回避してくださり、事なきをえたのだった。 私がこの時勢いよく侵入していたら、完全にぶつかっていただろう 。
前の車の年配女性は、考え事をしていたのだと言い、深々と頭を下げて中に入っていった。
彼女の普段の運転はもちろん知らないが、考え事をしているとこんなに怖いことが起きるのだ!病院での出来事だけに、自身あるいは家族の心配事があったのかも知れない。
歳を重ねるにつれ、何でも熟練していたいと願う。それでもやはり身体の衰えには勝てないということなのだろうか?何だかさびしい気がする。
【一言居士】いちげんこじ … 事あるごとに自分の意見をひとこと言わなければ気のすまない人のこと。「居士」は、もと僧でなく仏教信仰する男子の称で、わが国では男子が死亡した後につける戒名の称号。ここでは「一言抉(こじ)る(こじつける)」を人名になぞらえたもの。
補説 … 「一言」は「いちごん」とも読む。
漢検四字熟語辞典【第一版】より