かつて勤めていた会社の休憩時間に、自分のお菓子をどうぞという感じで勧めてくれる人が何人かいた。
ちょうどその頃は療養生活を終え、ようやく社会復帰を果たしていた。
毎朝飲んでいるステロイド剤の副作用で、ムーンフェース(満月様顔貌)という顔がパンパンになってしまうのを恐れていたし、食欲が増して体重増加をしてしまうと病気にも悪い影響を与えてしまうのでかなり神経質になっていた。
この頃は、この勧めてくれるお菓子を丁寧に断っていた。
それが何人も何回も続くとなると、とうとうあの人はちょっとおかしいんじゃないか?なんて思われ始めてしまう。
同僚:「ちょっとくらいだったらいいんじゃない?」
私:「食べないって決めてるし…ありがとう。」
たぶんそんなやりとりを何回もしたと思う。
そう、この頃の私は徹底してやり遂げることに凝っていた。
お菓子は食べない、午後8時以降は食べ物を口にしないというルールを作り、実行していた。
この職場では、研修に行く時に待ち合わせのことなどで同僚と気まずい雰囲気になってしまい、その他諸々の理由で結局辞めることになった。
その後の私は、みんなで楽しくおいしくいただくっていうその場の空気とかを大事に考えるようになり、お菓子断ちをやめることにした。
ここ数年の私は休憩時間にお菓子を食べ、人にも勧めるようになっていた。
チョコレート好きをアピールする人も多いし、だいたい喜んでくれる。
それまでまったく食べることのなかったグミキャンディーに凝っていた時期もあって、フルーツの中では柑橘類が好きだから、レモン味ばかり買っていた。
ある時そのレモン味のグミを勧めたところ、「あ~私酸っぱいの苦手やから~。」っていうふうに返ってきた。
自分の価値観で勧めてしまった!!
自分ではこの程度なら酸っぱいなんて感じていないから、相手もそうなのだろうと勝手に判断していた。
こんな時は「◯◯さん、酸っぱいの食べられる?」とか、ちょっと相手の好みを伺ってからにしようって思った。
今回は私より10歳以上年上の人であったのだけど、あからさまにそんなもの勧めないでよ~感が出ていた。
嗜好品も押しつけにならないよう注意しなきゃなぁなんて、あらためて考えさせられる出来事だった。
【移木之信】いぼくのしん … ⇨(しぼくのしん) … 約束を実行するたとえ。とくに政府は法の権威と信用を人民に示すべきであるということ。
故事 … 秦の商鞅が法の改正にあたって都の南門の木を北門に移す者には金十金を与えると布告したが、疑って移す者がいないので五十金に増額すると木を移す者がいた。商鞅は運んだ者には法の約束どおり金を与えてその信用性を示したことから。
漢検四字熟語辞典【第一版】より