遡ること9年、人工股関節置換術のオペを受けるために、子どものお弁当作りのことも考慮して夏休みである8月を選んだ。
手術を受けるには執刀医の都合上早くからの予約が必要であり、先生と相談し事前検査の日を含めて逆算した最短での予約が叶った。それが手術4カ月前のことだった。
その手術のための事前の検査をいくつか受け、輸血に備えるため自己血液を予め採取することになった。採血中は、よっぽど私の顔色が悪かったとみえてやたらと付き添いの先生が「大丈夫ですか?」の声かけをされていた。
実はこの時気分が悪かったわけじゃなく、この日着て行った黒の服にとんでもないあるものを見たからなのである。
それは、キッチン用の漂白剤が飛び散ったほんのわずかな色の抜け。これを見た私は、今自分が置かれている状況にそぐわないながらも、この服を着てきてしまったことに後悔をし始めていた。
この後、本当に気分が沈んでしまい顔色も悪くみえたのかも知れない。今考えるとくだらないこと考えてたなと思う。
《手術当日》
麻酔科の女性医師によると、全身性エリテマトーデス患者の肌は外部からの影響を受けやすく荒れてしまっている人を多くみかけたが、きれいなほうだとおっしゃっていた。たぶん、下腿潰瘍(足)の痕を見なかったせいでしょう。
麻酔注射後のカウントアップとともに私の意識は薄れ、完全にわからなくなった。
確か、「いち、に、さん、し」までは言ってたと思う。その後しだいに口が重たくなっていき、しゃべられなくなる。これが麻酔の効きはじめであり、いったいどの数まで言えたのか知る由もないのだ。そしてこれが、オペの始まりの合図となる。(つづく)
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【一切衆生】いっさいしゅじょう … この世に生を受けたあらゆるもの。生きとし生けるもの。仏教の語。「一切」はすべての意。
漢検四字熟語辞典【第一版】より